随想 市民劇場の楽しみ

会員の渡邉春生さんの随想です

市民劇場の楽しみ

毎年、12月になるとマルシャークの「森は生きている」という劇の案内を見かける。もう40年以上前、伊東市民劇場で観たことがある。今では下田市にも市民劇場があるが、私が住んでいた当時は文化会館も映画館もなくて、電車で1時間かけて伊東の市民劇場まで通っていた。記憶はもう定かでないが、山本圭の「ハムレット」は舞台装置がジャングルジムみたいな斬新なもので、びっくりした覚えがある。最終列車に飛び乗り、仲間たちと感想を言い合ったことが懐かしい。

結婚後、富士宮に住むようになり、仕事の関係で市民劇場とは縁がなかったが、末の娘が大学生の時、親子3人でサークルを作り、富士宮市民劇場に入会した。今では、家を出た娘に代わって姉が会員になっている。うちのように家族で作っているサークルもあるが、友達同士や職場仲間のサークルも多い。若い夫婦に年配者が会費をプレゼントして勧めたり、逆に息子や娘から会費をプレゼントされたりという微笑ましい話も聞く。普段はあまり話し合う習慣がなくても、同じ舞台を観たことで、お互いに自分の気持ちや考えを相手に伝えたくなるものだ。私も妻と「あの役者が良かったね」「あの場面は何を言いたかったんだろう」などと話しながら帰る。

最近の舞台で印象に残っているのは、創氏改名を拒んだ一朝鮮人の物語「族譜」(青年劇場)、栗原小巻と樫山文枝の競演による「メアリー・スチュアート」(エイコーン)、83歳の仲代達矢が熱演した「俺たちは天使じゃない〜3人の天使たち」(無名塾)、抱腹絶倒の「OH!マイママ」(劇団NLT)など。

市民劇場の特徴は、サークルの仲間と共に劇団を迎えるための準備をしたり、舞台の運営に関わることだ。年に1回きりだが、その活動の過程で、芝居の内容や役者さんについて詳しく知ることが出来たり、大道具、小道具を間近に見ることも出来る。

一昨年、前進座の「通し狂言 切られお富」の担当になったときは、芝居の始まる前に、劇団の方が説明しながら舞台裏を案内してくれるバックツアーに参加することが出来て大変興味深かった。

舞台には生身の肉体と肉声が放つエネルギーの輝きがあり、他では得られない感動がある。東京まで交通費と時間をかけて観に行くことを考えると、富士宮市民文化会館で年に6回、多様な舞台を観られるのは大変ありがたい。会場で旧交を温めることもあったり、新しい友人との出会いがあったりすることもうれしい。

今年2月には、劇団民藝『SOETSU 韓くにの白き太陽」の公演がある。誠実を全身に纏ったような俳優、篠田三郎が民藝運動の柳宗悦を演ずる。とても楽しみだ。

(岳南朝日 随想より)

読みながら、思わず頷いてしまう。そんな共感一杯の随想でした。

朝から、私も観続けるぞーーー!と叫びたくなりました。